概説 |
中性脂肪のトリグリセライドを減らすお薬です。高脂血症の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 高脂血症は脂質異常症ともいいます。血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が多すぎたり、善玉コレステロールが少なすぎる状態です。自覚症状がなくても、長いあいだに動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、あるいは脳卒中の原因になりかねません。
このお薬は高脂血症治療薬です。中性脂肪のトリグリセライドを減らす一方、いわゆる善玉のHDLコレステロール値はむしろ上昇します。とくにトリグリセライド低下作用が強いため、トリグリセライド値が高い高脂血症に向きます。トリグリセライドの減少は、心筋梗塞など心血管系の病気の予防になると考えられるのです。

- 【薬理】

- 肝臓の細胞のPPARαという核内受容体に結合し、脂質代謝にかかわる遺伝子の発現を調節します。その結果として、脂質代謝が改善し、トリグリセライド減少とHDLコレステロール増加をもたらすのです。このような作用機序から、PPARα作動薬とかPPARα刺激薬(PPARαアゴニスト)と呼ばれます。
 【臨床試験】
- 海外で、約1万人の2型糖尿病の患者さんを対象とした大規模臨床試験がおこなわれています(FIELD)。糖尿病のある人に限っては、心筋梗塞など心臓病の発症率をおおよそ10%減少させることが示されました。また、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症の抑制効果も認められました。
- 中性脂肪の高い糖尿病の患者さん418人を対象とした3年間におよぶ試験がおこなわれています(DAIS)。冠状動脈疾患の進行度が、プラセボ(にせ薬)群と比べ平均25%抑制されることが示されました(冠状動脈の平均直径で評価)。
- コレステロール値が平均250の男性1万人を2つのグループに分け、同系のクロフィブラートとプラセボ(にせ薬)の効果を比較した古い研究があります。4年目の総死亡率は、クロフィブラートを飲んでいた人のほうが、かえって高いという意外な結果でした。
- 同系薬剤による高脂血症を主対象とする質の高い予後検証試験はほとんどありません。糖尿病がある場合は別として、トリグリセライドを低下させることで本当に心血管系の病気を予防できるのか現時点で明確とはいえないのです。とくに心筋梗塞の少ない日本人の長期予後に関しては検証不十分です(PROMINENT試験に参加予定)。
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特徴 |
- 第二世代のフィブラート系高脂血症治療薬です。薬理作用からは、PPARα作動薬(PPARαアゴニスト)に分類されます。核内受容体のPPARαに結合後、おもに肝臓の脂質代謝にかかわる遺伝子群の発現を調節して脂質代謝を改善します。
- 中性脂肪のトリグリセライド低下作用が強力です。一方で、HDLコレステロールなど ある種のコレステロールを増やす作用もします。このような特性から、トリグリセライド値が高く、コレステロールは正常範囲の高脂血症に好んで用いられます。コレステロール値だけが高いタイプには、別系統のスタチン薬を優先しなければなりません。
- 第一世代より強力なこともあり、高トリグリセリド血症の是正に広く処方されるようになりました。動脈硬化の独立した危険因子とされコレステロールの一種リポプロテイン(a)を低下させる作用もあるようです。実際に、糖尿病を合併している人を対象とした臨床試験で予後改善が示されており、心筋梗塞など心血管系の病気のほか、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症の抑制効果が期待できます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は、また妊娠中の人は、医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬は、医師に伝えておきましょう。

- 【注意する人】

- 肝臓や腎臓が悪い人、胆のうに病気がある人は、病状により使用できないことがあります。高齢の人も、少量にするなど慎重に用います。
- 適さないケース..肝臓病、重い腎臓病、胆石など胆のうに病気がある人、妊娠中。
- 注意が必要なケース..腎臓病、高齢の人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- スタチン系のコレステロール低下薬といっしょに飲むと「横紋筋融解症」という筋肉の副作用がでやすくなります。とくに腎臓病のある人は、治療上やむを得ない場合に限り併用し、併用の際は少量より開始するとともに、定期的に腎機能検査を実施します。そのほか、陰イオン交換樹脂剤のコレスチラミンとは同時服用を避け、服用時間をずらす必要があります。
- 飲み合わせに注意..スタチン系コレステロール低下薬(メバロチン、リポバス、リピトール、ローコール)、ワルファリン(ワーファリン)、スルホニル尿素系血糖降下薬(オイグルコン、ダオニール、グリミクロン、アマリール)、コレスチラミン(クエストラン)、シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)など。
 【使用にあたり】
- 症状や体質、治療目標値によって飲む量が異なります。指示どおりに正しくお飲みください。高齢の人や腎臓の働きの悪い人は、より少量となることがあります。
- 空腹時ですと吸収が悪いので、食後に飲むようにします。
- 長期に飲み続けることが多いです。

- 【検査】

- 定期的に決められた検査を受け、効果や副作用をチェックするようにしましょう。肝機能検査、腎機能検査、血液の検査が大事です。とくに肝機能検査は、はじめの3カ月間は毎月おこなうことになっています。

- 【食生活】

- 食事療法、運動療法、適切な体重の維持、禁煙なども大切です。これらをきちんとおこなえば、薬を飲まなくて済むことが多いものです。薬を飲みはじめても、不摂生をしては意味がありません。
 【備考】
- コレステロールは、臨床的意義により大きく2つのタイプに分かれます。一つは悪玉とされるLDLコレステロール、もう一つは善玉のHDLコレステロールです。LDLは肝臓からコレステロールを全身の組織に運ぶ役目をしているのですが、多すぎると血管内壁に入り込み動脈硬化を進めます。一方、善玉とされるHDLは、全身の組織から余分なコレステロールを回収し肝臓に戻します。このHDLコレステロールが少なすぎるのも良くないので、脂質異常症(高脂血症)のひとつの判定基準になります。高コレステロール血症にいちばん効くのはスタチン薬です。
- 中性脂肪のトリグリセリドも脂質異常症の主要な判定基準です。中性脂肪はエネルギー源として蓄えられますが、多すぎてはいけません。独立した危険因子とされ、動脈硬化を進め心血管疾患のリスクを高めるのです。高トリグリセリド血症の治療には、フィブラート系薬剤(この薬)を中心に、EPA製剤やニコチン酸誘導体が用いられます。
- 薬を飲む必要があるかは、単にコレステロールや中性脂肪の値だけでは判断できません。喫煙、肥満、年齢、高血圧、糖尿などがあり、心筋梗塞を起こす危険性の高い人は、より低い値でも服薬をすすめられるものです。逆に、コレステロール値が多少高いだけで、その他のリスク要因が少ないのであれば、必ずしも薬物治療を必要としません。とくに、もともと心筋梗塞の少ない日本人女性での有用性については議論のあるところです。
- コレステロールは体に必要なものです。免疫細胞やホルモンを作るのにも欠かせません。やみくもにコレステロール値を下げればよいというものではありません。
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効能 |
高脂血症(家族性を含む) |
用法 |
通常、成人はフェノフィブラートとして1日1回106.6mg〜160mgを食後経口服用する。なお、年齢、症状により適宜減量する。1日160mgを超える用量は服用しないこと。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
注意したいのは、筋肉が障害を受ける「横紋筋融解症」です。まれな副作用ですが、とくに腎臓の悪い人、高齢の人は注意が必要です。また、別のスタチン系のコレステロール低下薬といっしょに飲むと起こりやすいといわれます。足のふくらはぎなどに筋肉痛があらわれたら、すぐに受診してください。
そのほか、わりと多いのは腹痛や吐き気など胃腸症状です。また、特異な副作用として胆石や肝障害、膵炎もあります。万一、激しい腹痛や嘔吐、皮膚や白目が黄色くなるといった症状がみられたら、すぐに連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
 【その他】
- 肝機能値の異常..AST、ALT等の肝機能値が上昇(まれに肝障害にいたることがあるので要注意)。
- 胆石..右上腹部から右背部にさしこむような痛み、発熱。
- 胃の不快感、腹痛、吐き気
- 発疹、かゆみ
- 脱力感、性欲の低下
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