概説 |
心拍を抑え、血圧を下げるお薬です。高血圧症や不整脈の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 働きすぎの心臓を休める作用があります。過剰な心拍が鎮まるので、血圧も下がります。このような作用から、高血圧症や頻脈性心房細動の治療にも用いられます。日々の血圧を適切にたもつことは、将来起こるかもしれない脳卒中や心臓病、腎臓病を防ぎ、より長生きにつながります。頻脈性心房細動においては、心拍数低下作用に基づく心拍数調節治療に有用です。

- 【薬理】

- β(ベータ)遮断薬と呼ばれるように、主作用は心臓を興奮させる交感神経のβ受容体を遮断することです。これにより心臓の心拍数が減少し心拍出量が低下、結果的に血圧が下がります。さらに、腎臓における昇圧物質レニンの分泌抑制作用、中枢での交感神経抑制作用なども示します。
β遮断薬のなかでは、β1選択性、ISA(-)、水溶性といった特徴をもちます。β1選択型は、気管支への作用が弱く、末梢血管に対しても影響しにくいことから副作用の軽減が期待できます。ISAは内因性交感神経刺激作用のことで、これがないので本来の徐脈作用だけをを目的とする場合に好都合です。また、水溶性で脳内に入りにくいことから、気分の変調や抑うつなど精神系の副作用も起こりにくいと考えられます。

- 【臨床試験-1】

- 軽症〜中等症の高血圧症の患者さん459人による臨床試験が行われています。クジ引きで3つのグループに分かれ、184人はこの貼り薬(実薬8mg)を、93人はプラセボの貼り薬(にせ薬)を、残りの182人は飲み薬のビソプロロールフマル酸塩錠(メインテート錠5mg)を使用し、使用前と2カ月使用後の血圧の変化量を比較する試験です。
その結果、この貼り薬を使用していた人達の収縮期(上)の血圧は平均13.5(150.9→137.5)下がり、拡張期(下)の血圧は12.1(99.9→87.7)下がりました。一方、プラセボの人達の収縮期(上)の血圧は平均3.9(148.9→144.9)下がり、拡張期(下)の血圧は3.8(99.5→95.7)下がりました。また、飲み薬のビソプロロールフマル酸塩錠を飲んだ人達の収縮期(上)の血圧は平均12.9(151.3→138.4)下がり、拡張期(下)の血圧は11.8(99.9→88.1)下がりました。
プラセボに比べ、この貼り薬を使用していた人達のほうが明らかに下げ幅が大きく、高血圧症に対する有効性が証明されたわけです。また、飲み薬のビソプロロールフマル酸塩錠の降圧効果に劣ることはなく同等の有効性があることも確かめられました。副作用については、貼付部位の皮膚症状をのぞき、飲み薬と同程度で、安全性についても大きな問題はありませんでした。

- 【臨床試験-2】

- 心房細動における心拍数低下作用を検証する試験も行われています。参加したのは24時間ホルター心電図による安静時平均心拍数が80拍/分以上の慢性(持続性・永続性)心房細動の患者さん220人。そして、この貼り薬(4mgまたは8mg)を使用するグループと、対照薬として同成分の飲み薬ビソプロロールフマル酸塩錠(メインテート錠2.5mgまたは5mg)を服用するグループに分かれ、使用1カ月後の心拍数の変化量を比較するのです。
その結果、この貼り薬4mgを使用していた人達の心拍数は平均12拍低下(90→78)、8mgの人達で14拍低下(92→78)しました。一方、飲み薬のグループでは、2.5mg服用で13拍低下、5mg服用の人達で14拍低下しました。この貼り薬4mgと飲み薬2.5mg、この貼り薬4mgと飲み薬5mgの比較において、事前に規定された同等性(非劣性)の基準を満たすことが示されました。この貼り薬が、既承認の飲み薬と同程度有効なことが証明されたわけです。
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特徴 |
- 世界初のβ遮断薬のテープ剤です。有効成分のビソプロロールが皮膚からゆっくり吸収され、安定した血中濃度が維持されます。このため、1日1回の貼り替えで24時間にわたり良好な降圧効果が得られるのです。飲み込む力が衰え錠剤の内服が難しい高齢の人に適した製剤といえるでしょう。
- ビソプロロールを2mg、4mgまたは8mg含有する3種類のテープ剤が販売されています。テープ8mgの降圧効果は、飲み薬の錠剤5mg(メインテート錠5mg)と同程度です。なお、飲み薬は、高血圧症と頻脈性心房細動にくわえ、狭心症、心室性期外収縮、慢性心不全などにも適用します。
- β遮断薬のなかでは以下のような特徴をもちます。昔はβブロッカー、最近はβアンタゴニストと呼ばれる部類です。
※β1選択性:β1受容体がある心臓に選択的に作用します。非選択性の薬剤に比べ、気管支や末梢血管に影響しにくく、喘息を誘発する危険性も低いです。β1アンタゴニストということになります。
※ISA(-):内因性の交感神経刺激作用がありません。この特性は、心臓への無用な刺激を避け、本来の徐脈作用による心臓の休息に好都合です。一方で、過量により高度徐脈や心不全の悪化をまねくおそれがあります。
※水溶性・腎排泄性:吸収や代謝が遅く、多くは腎臓から直接排泄されます。また、脳内に入りにくいので、気分変調、抑うつ、悪い夢を見るなど中枢性の副作用も比較的少ないと考えられます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人、また妊娠中の人は医師に伝えておきましょう。
- 使用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 病気によっては、かえって病状を悪化させるおそれがあります。心不全、喘息、レイノー症状や間欠跛行をふくめ末梢循環障害のある人は原則禁止です。用いるのであれば、病状の悪化に十分注意しなければなりません。高齢の人も徐脈や心不全など副作用の発現に注意が必要です。腎臓病のある人は薬の排泄が遅れがちなので、少量(4mg)より開始することがあります。
- 適さないケース..急性心不全、重い心臓の刺激伝導障害や高度の徐脈、重い末梢循環障害(壊疽)、未治療の褐色細胞腫またはパラガングリオーマ、妊娠中の人など。
- 注意が必要なケース..喘息、気管支炎や肺気腫で気管支けいれんのおそれがある人、心臓の刺激伝導障害や徐脈、うっ血性心不全、末梢循環障害(レイノー症状、間欠跛行、末梢動脈疾患)、糖尿病、過度の低血圧、異型狭心症、乾癬、腎臓病、重い肝臓病、高齢の人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。飲み合わせによっては、副作用がでやすくなります。使用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。
- 高血圧や狭心症に用いるジルチアゼム(ヘルベッサー)、ベラパミル(ワソラン)、あるいは心臓の薬のジギタリス薬や抗不整脈薬と併用すると徐脈を起こしやすくなります。
- インスリンや血糖降下薬の効き目に影響する可能性があります。低血糖症状がマスクされ気づかないうちに血糖が下がりすぎたり、低血糖からの回復が遅れることもあります。
- 抗炎症・鎮痛薬(NSAIDs)との併用により、この薬の降圧作用が少し弱まるかもしれません。
 【使用にあたり】
- 1日1回、24時間おきに貼り替えます。時間は朝が一般的ですが、病状にもよりますので医師の指示どおりにしてください。
- 高血圧症における通常量は8mg。腎臓の弱い人や高齢の人は半分の4mgで開始することがあります。
- 頻脈性心房細動の場合は4mgから始めます。血圧や心拍数、症状、腎機能の程度によっては2mgから開始することがあります。効果不十分な場合は8mgまで増量可能です。
- 貼る場所は、胸部、上腕部または背部のいずれかです。ベルトラインは避け、傷や湿疹がある部位もやめてください。汗をよく拭きとり、清潔にしてから貼るようにしましょう。
- 必ず毎回貼る場所を変えてください。皮膚刺激による副作用を避けるためです。貼り替えのさい古いテープの剥がし忘れにも注意しましょう。皮膚を傷つけないようにゆっくりと慎重に剥離してください。
- 貼り忘れた場合は気がついた時にできるだけ早く貼ってください。ただし、翌日に2回分を一度に貼るのは危険ですから絶対に避けてください。
- 家庭血圧計で血圧と脈拍数(心拍数)を、できるだけ毎日 自己測定してください。とくに注意が必要なのが脈拍数。脈が1分間に50を下回るようなら要注意です。さらに40近くまで減少したらすぐに医師と連絡をとってください。
- 自分だけの判断でやめてはいけません。急に中止すると、動悸など反発的な症状を起こすおそれがあります。もともと狭心症のある人では、狭心発作や心筋梗塞を起こした症例も報告されています。中止するときは、医師の判断で徐々に減量するようにします。
- 高温を避け、子供の手が届かない場所に保管してください。また、使用済み製剤は接着面を内側にして折りたたみ、子供の手が届かず目に入らない所に安全に廃棄してください。

- 【検査】

- 心電図検査や血液検査を定期的に受ける必要があります。
 【妊娠・授乳】
- 妊娠中またはその可能性のある女性は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。
- 授乳は、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し医師がその可否を決めます。
 【食生活】
- 血圧が下がり、めまいを起こすことがあります。車の運転や高所での危険な作業には十分注意してください。
- 本態性高血圧症では、生活習慣の見直しも大切。減塩などの食事療法、運動療法、肥満があれば体重を落とすだけでも血圧が下がるものです。軽い高血圧であれば、薬をやめられることもあります。できたら簡易血圧計で自宅で血圧測定をおこない、適切に血圧がコントロールされているかチェックすることをおすすめします。
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効能 |

- 【効能A】

- 本態性高血圧症(軽症〜中等症)

- 【効能B】

- 頻脈性心房細動
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用法 |

- 【効能A】

- 通常、成人はビソプロロールとして8mgを1日1回、胸部、上腕部又は背部のいずれかに貼付し、貼付後24時間ごとに貼りかえる。なお、年齢、症状により1日1回4mgから使用を開始し、1日最大使用量は8mgとする。

- 【効能B】

- 通常、成人はビソプロロールとして1日1回4mgから使用開始し、効果が不十分な場合には1日1回8mgに増量する。本剤は胸部、上腕部又は背部のいずれかに貼付し、貼付後24時間ごとに貼りかえる。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最大使用量は8mgとする。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用でいちばん多いのは、使用部位の皮膚症状です。赤くなったり、かゆくなることがよくあります。同一箇所に貼り続けないで、毎回貼る場所を変えることで、ある程度軽減できると思います。ひどければ、ステロイド軟膏などで対処可能ですので、医師とよく相談してください。
全身の副作用としては、飲み始めに 体がだるくなったり、めまいを感じることがあります。軽ければたいてい心配いりませんが、ひどいときは早めに受診しましょう。もともと喘息のある人は、喘息発作の誘発にも注意してください。検査で見つかるのは、中性脂肪の上昇や肝機能値の異常などです。
心臓の副作用として、徐脈があります。脈が1分間に50以下になったり、めまいやふらつき、息苦しさや胸苦しさが強いときは、医師に連絡してください。とくに高齢の人は、徐脈をふくめ心拍数・心リズム障害を起こしやすいので注意が必要です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 心不全、心ブロック、高度な徐脈..息苦しい、胸が苦しい、動悸、疲れやすい、むくみ、急な体重増加、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、めまい、気が遠くなる、失神。
- 喘息発作の誘発..咳込む、ぜいぜいする、息をするときヒューヒュー音がする、息切れ、呼吸しにくい。
 【その他】
- 貼付部位の皮膚炎(発赤、かゆみ、腫れ)
- だるい、めまい、ふらつき
- 徐脈、低血圧、むくみ
- 手足の冷え、しびれ感
- 目の乾燥(目がゴロゴロ、しょぼつく)
- 中性脂肪(トリグリセリド)の上昇、肝機能値の異常
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