概説 |
血圧を下げるお薬です。高血圧症に用います。 |
作用 | 血圧の上昇にかかわるレニン・アンジオテンシン系サイクルの起点となる酵素“レニン”をおさえます。結果として、このサイクルで産生される昇圧物質“アンジオテンシン”の濃度が低下し、持続的な降圧効果をもたらします。
正式な適応症は高血圧症です。病状にもよりますが、心臓病(心不全など)や腎臓病(腎硬化症、糖尿病性腎症など)に対する効果も期待できます。血圧を適切にたもつことは、将来起こるかもしれない脳卒中や心臓病、腎臓病を防ぐことになるのです。 |
特徴 |
- 直接的レニン阻害薬と呼ばれる、新しいタイプの降圧薬です。略称はDRI(Direct Renin Inhibitor)。作用や効果の出方は、レニン・アンジオテンシン系薬剤のACE阻害薬やAU拮抗薬(ARB)と似ています。
- 持続性があるので1日1回の服用で十分な血圧管理が可能です。単独で用いるほか、降圧効果の増強のため他の降圧薬との併用療法もおこなわれます。
- 欠点として、食事の影響を受けやすく、また個人差などにより血中濃度がばらつきやすいです。そのため、食事時間をふまえ、毎日同じ条件で服用を続ける必要があります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は医師に伝えてください。また、服用中に妊娠した場合は、すぐ医師に報告してください。
- 服用中の薬は、医師に伝えておきましょう。

- 【注意する人】

- 腎臓の悪い人は、その病状により使用できないことがあります。また、血液透析を受けている人、減塩療法中の人、利尿薬を服用中の人、高齢の人などは少量より開始するなど慎重に用います。妊娠中は使用できません。
- 適さないケース..妊娠中
- 注意が必要なケース..腎動脈狭窄など虚血性腎臓病のある人、その他の腎臓病、高カリウム血症、血液透析中、減塩療法中、脱水時、手術前、妊娠する可能性のある女性、高齢の人など

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせに注意する薬があります。飲み合わせによっては、副作用がでやすくなります。服用中の薬は、市販薬もふくめ医師に報告しておきましょう。
- 糖尿病のある人で ある種の降圧薬(ACE阻害薬、ARB、ARNI)をすでに飲んでいる人は、この薬の追加併用を原則避けます。副作用が強まるなど、かえって悪い結果をまねくおそれがあるためです。
- 水虫などに用いる抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、免疫抑制薬のシクロスポリン(ネオーラル等)とは併用できません。いっしょに飲むと、この薬の血中濃度が著しく上昇するおそれがあります。
- 他の降圧薬や利尿薬と併用するときは、血圧の下がりすぎに注意が必要です。とくに利尿薬を服用中に、この薬を追加するときは、ごく少量から始めるようにします。
- カリウム値が上昇しやすくなる飲み合わせがあります。カリウム補給薬をはじめ、抗アルドステロン薬(カリウム保持性降圧利尿薬)のエプレレノン(セララ)やスピロノラクトン(アルダクトン)、あるいはレニン・アンジオテンシン系に作用する降圧薬(ACE阻害薬、ARB)などです。これらと飲み合わせるときは、腎機能の悪化や血清カリウム値の上昇に注意が必要です。少量の併用でしたら、それほど心配ないでしょう。
- 利尿薬のフロセミドの効果を弱める可能性があります。また、抗不整脈薬のベラパミル(ワソラン)やコレステロール低下薬のアトルバスタチン(リピトール)との併用により、この薬の血中濃度が上昇するおそれがあります。
- 鎮痛薬との併用により、この薬の降圧作用が弱まる可能性があります。また、もともと腎臓の悪い人では、病状を悪化させるおそれがあります。
- 飲酒は控えてください。めまいや立ちくらみがでやすくなります。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方、服用量を守ってください。ふつう、少量で開始し、ゆっくり血圧を下げていきます。十分に血圧が下がるまでに、1〜2週間かかるかもしれません。
- 食事の影響を受けやすので、毎日同じ条件で服用してください。食後と決めたら、その後も必ず食後にしましょう。食前(空腹時)ですと、血中濃度が想定以上に上昇する可能性があります。
- 他の降圧薬や利尿薬といっしょに飲むことも多いです。とくに少量の利尿薬との併用は効果的と考えられています。

- 【検査】

- 血液検査を定期的に受ける必要があります。カリウムの値や、腎機能などに異常がないか調べます。腎機能が多少悪化しても、一過性であれば心配いりません。
 【妊娠・授乳】
- 妊娠中には用いません。中期以降に飲み続けると、胎児の発育に悪い影響をおよぼすおそれがあるためです。
- 妊娠する可能性がある場合は慎重に用います。服薬に先立ち妊娠していないことを確認し、さらに服薬中も定期的に確認します。もし、妊娠が判明または疑われる場合は、速やかに医師に伝えてください。なお、妊娠を計画する場合は、事前に担当医と相談しておきましょう。
- 授乳中の服薬の可否は医師が決めます。授乳中に服薬する場合は、授乳しないことが望ましいとされます。
 【食生活】
- とくに飲みはじめに、めまいや立ちくらみを起こしやすいです。急に立ち上がらないで、ゆっくり動作するようにしましょう。また、車の運転や高所での危険な作業には十分注意してください。
- 本態性高血圧症では、生活習慣の見直しも大切。減塩などの食事療法、運動療法、肥満があれば体重を落とすだけでも血圧が下がるものです。軽い高血圧であれば、薬をやめられることもあります。できたら簡易血圧計で自宅で血圧測定をおこない、適切に血圧がコントロールされているかチェックすることをおすすめします。
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効能 |
高血圧症 |
用法 |
通常、成人はアリスキレンとして150mgを1日1回経口服用する。なお、効果不十分な場合は、300mgまで増量することができる。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
降圧にともなう 体のだるさ、めまい感、頭痛などがみられます。これらは、徐々に慣れてくることが多く、それほど心配いりません。ひどいときは早めに医師に相談してください。
もともと腎臓の悪い人では、飲み始めに腎機能が一時的に悪化することがあります。この場合、「高カリウム血症」にも注意が必要です。定期的に血液検査を受けて、重くなる前に予防することが大切です。
重い副作用はまずありませんが、薬が効きすぎると、血圧が下がりすぎて、強いめまいや立ちくらみを起こすおそれがあります。とくに高齢の人、血液透析中、厳重な減塩療法中、夏季脱水時、また利尿薬など他の薬と併用するときなどに注意してください。
そのほか、発現頻度はきわめて低いものの、顔や口が腫れあがる重篤な血管浮腫(下記)が報告されています。万一のことですが、飲み始めに念のため注意してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 血管浮腫..顔や唇、舌、喉がひどく腫れる、飲み込みにくい、息がしにくい、手足が腫れる。
- アナフィラキシー様症状..じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、ゼーゼー息苦しい。
- 高カリウム血症..だるい、手や唇のしびれ、脱力、吐き気、下痢、息切れ、脈拍低下、脈の乱れ、不安感、取り乱す、けいれん。
- 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
 【その他】
- だるい、めまい、ふらつき、頭痛
- 腎機能の一過性の悪化、血中カリウム増加
- 肝機能異常、高尿酸血症
- 下痢、発疹
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