概説 |
心臓を休ませ、血圧を下げるお薬です。高血圧症のほか、狭心症や不整脈、慢性心不全の治療に用います。 |
作用 | 心拍をおさえ心臓を休ませる作用があります。作用メカニズムは、心臓にある交感神経のβ受容体を遮断することです。これにより心臓の拍動がおさえられ、血圧が下がります。高血圧症のほか、狭心症や不整脈(頻脈)の治療にも用います。
本来、心不全には禁忌なのですが、病状によっては有効なことが分かってきました。心臓の負担が軽くなり、予後の改善(長生き)につながる可能性があるのです。そのため、心筋症や一部の慢性心不全に対し、専門医により慎重に使用されることがあります。 |
特徴 | β遮断薬(ベータブロッカー)という系統です。同系のなかでは以下のような特徴をもちます。
- β1選択性:心臓にだけ選択的に作用します。気管支への影響が少く、喘息を誘発する危険性が比較的低いと考えられます。
- ISA-:内因性の交感神経刺激作用がありません。この特性は、心臓への無用な刺激がないことを意味し、心臓を純粋に休ませるのに好都合です。一方で、徐脈作用が強く、心不全の発現に注意が必要です。
- 水溶性:吸収や代謝が遅く、多くは腎臓から直接排泄されます。また、脳内に入りにくいので、気分の変調など中枢性の副作用が少ないと考えられます。
- 半減期が長く、持続性があります。服用回数は、通常1日1回だけです。
- 心不全に対する有効性が海外での臨床試験で確認されており、ヨーロッパを中心に心不全の治療に広く用いられています。もともと、日本では適応外でしたが、2011年に公知申請という特例扱いで、慢性心不全の効能が正式に認められました。
|
注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人、また妊娠中の人は、医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬は、医師に伝えてください。
- 【注意する人】
- 病気によっては、かえって病状を悪化させるおそれがあります。急性心不全や喘息、レイノー症状のある人は基本的に禁忌です。糖尿病の人では、血糖降下薬の副作用(低血糖)がでやすくなるので注意してください。高齢の人も徐脈や心不全を起こしやすいので、少量より開始するなど慎重に用います。
- 適さないケース..急性心不全、重い心臓の刺激伝導障害や徐脈、重い末梢循環障害、未治療の褐色細胞腫、妊娠中の人など。
- 注意が必要なケース..喘息のある人、気管支炎や肺気腫で気管支けいれんのおそれがある場合、心臓の刺激伝導障害や徐脈、末梢循環障害(レイノー症状)、糖尿病、過度の低血圧、異型狭心症、乾癬、腎臓や肝臓の悪い人、高齢の人など。
- 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。飲み合わせによっては、副作用がでやすくなります。服用中の薬は、医師に報告しておいてください。
- 高血圧の薬のジルチアゼム(ヘルベッサー)やベラパミル(ワソラン)、心臓の薬のジギタリス薬、抗不整脈薬、あるいは多発性硬化症治療薬のフィンゴリモド(ジレニア)などと併用すると徐脈を起こしやすくなります。
- 糖尿病の薬の副作用(低血糖)を強めるおそれがあります。
- 鎮痛薬との併用により、降圧作用が弱まる可能性があります。
【使用にあたり】
- 決められた飲み方、服用量を守ってください。
- 慢性心不全に用いる場合は、ごく少量から開始し、段階的に増量していきます。症状によっては、入院して医師の管理下で治療を開始します。
- 自分だけの判断で、量を減らしたり、飲むのをやめてはいけません。急に中止すると、狭心発作など反発的な症状を起こすおそれがあります。中止するときは、医師の判断で徐々に減量するようにします。
- 飲み忘れにも注意してください。万一飲み忘れた場合、2回分を同時に飲んではいけません。
- 【検査】
- 心電図検査や血液検査を定期的に受ける必要があります。
【妊娠・授乳】
- 妊娠中またはその可能性のある女性は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。
- 授乳は、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し医師がその可否を決めます。
【食生活】
- 血圧が下がり、めまいを起こすことがあります。車の運転や高所での危険な作業には十分注意してください。
- 本態性高血圧症では、生活習慣の見直しも大切。減塩などの食事療法、運動療法、肥満があれば体重を落とすだけでも血圧が下がるものです。軽い高血圧であれば、薬をやめられることもあります。できたら簡易血圧計で自宅で血圧測定をおこない、適切に血圧がコントロールされているかチェックすることをおすすめします。
|
効能 |
【効能A(錠2.5mg~5mg)】
- 本態性高血圧症(軽症〜中等症)
- 狭心症
- 心室性期外収縮
- 【効能B(錠0.625mg~2.5mg~5mg)】
- 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
- 【効能C(錠2.5mg~5mg)】
- 頻脈性心房細動
|
用法 |
- 【効能A】
- 通常、成人はビソプロロールフマル酸塩として、5mgを1日1回経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
- 【効能B】
- 通常、成人はビソプロロールフマル酸塩として、1日1回0.625mg経口服用から開始する。1日1回0.625mgの用量で2週間以上経口服用し、忍容性がある場合には、1日1回1.25mgに増量する。その後忍容性がある場合には、4週間以上の間隔で忍容性をみながら段階的に増量し、忍容性がない場合は減量する。用量の増減は1回服用量を0.625、1.25、2.5、3.75又は5mgとして必ず段階的に行い、いずれの用量においても、1日1回経口服用とする。通常、維持量として1日1回1.25〜5mgを経口服用する。なお、年齢、症状により、開始用量は更に低用量に、増量幅は更に小さくしてもよい。また、患者の本剤に対する反応性により、維持量は適宜増減するが、最高服用量は1日1回5mgを超えないこと。
- 【効能C】
- 通常、成人はビソプロロールフマル酸塩として、1日1回2.5mg経口服用から開始し、効果が不十分な場合には1日1回5mgに増量する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高服用量は1日1回5mgを超えないこと。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
飲み始めに、体がだるくなったり、めまいを感じることがあります。軽ければたいてい心配いりませんが、ひどいときは早めに受診しましょう。もともと喘息のある人は、喘息発作の誘発にも注意してください。
心臓の副作用として、徐脈があります。脈が1分間に50以下になったり、息苦しさや胸苦しさが強いときは、医師に連絡してください。とくに高齢の人は、徐脈を含め心拍数・心リズム障害を起こしやすいです。
慢性心不全の治療においては、かえって病状が悪化するおそれがあります。ことに飲み始めや増量時に要注意。もし、疲労や息切れ、息苦しさ、めまい、むくみや体重増加、徐脈など体調に異変が現れたなら、直ちに医師に連絡してください。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 心不全、心ブロック、高度な徐脈..息苦しい、胸が苦しい、動悸、疲れやすい、むくみ、急な体重増加、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、めまい、気が遠くなる、失神。
- 喘息発作の誘発..咳込む、ぜいぜいする、息をするときヒューヒュー音がする、息切れ、呼吸しにくい。
【その他】
- だるい、めまい、ふらつき
- 徐脈、低血圧、むくみ
- 手足の冷え、しびれ感
- 目の乾燥(目がゴロゴロ、しょぼつく)
- 気分がしずむ、眠気、不眠
|