概説 |
血圧を下げるお薬です。高血圧症のほか、狭心症や不整脈の治療に用います。そのほか、手のふるえを抑えるのにも使用します。 |
作用 | 血管を広げる作用と、心拍をおさえ心臓を休ませる作用があります。作用メカニズムは、交感神経のα受容体とβ受容体を遮断することです。両方の受容体に働くことで、降圧作用が強まり、逆に副作用は軽減されます。
血圧を適切に保つことは、将来起こるかもしれない脳卒中や心臓病、腎臓病を防ぐことにつながります。
- α遮断作用..血管にあるα受容体を遮断して、血管を広げます。その結果、血圧が下がります。
- β遮断作用..心臓にあるβ受容体を遮断して、心臓の拍動をおさえます。その結果、脈が落ち着き、血圧も下がります。また、骨格筋のβ遮断作用により、抗振戦作用を発揮します。
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特徴 | αβ遮断薬という系統です。主要な作用はβ遮断作用になります。同系のなかでは以下のような特徴をもちます。
- 効力比.. α:β=1:8
- β1非選択..心臓だけでなく、気管支などにも影響しやすいです。
- ISA-..内因性の交感神経刺激作用がありません。
- 水溶性..吸収や代謝が遅く、多くは腎臓から直接排泄されます。また、脳内に入りにくいので、気分の変調など中枢性の副作用が少ないと考えられます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人、また妊娠中の人は、医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬は、医師に伝えてください。

- 【注意する人】

- 病気によっては、かえって病状を悪化させるおそれがあります。心不全や喘息のある人は基本的に禁忌です。糖尿病の人では、血糖降下薬の副作用(低血糖)がでやすくなるので注意してください。高齢の人も心不全などの副作用がでやすいので、少量より開始するなど慎重に用います。
- 適さないケース..喘息のある人、気管支炎や肺気腫で気管支けいれんのおそれがある場合、心不全、重い心臓の刺激伝導障害や徐脈、未治療の褐色細胞腫、妊娠中の人など。
- 注意が必要なケース..心臓の刺激伝導障害や徐脈、低血圧、末梢循環障害(レイノー症状)、糖尿病、異型狭心症、腎臓や肝臓の悪い人、高齢の人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。飲み合わせによっては、副作用がでやすくなります。服用中の薬は、医師に報告しておきましょう。
- 高血圧の薬のジルチアゼム(ヘルベッサー)、ベラパミル(ワソラン)、心臓の薬のジギタリス薬や抗不整脈薬、あるい多発性硬化症治療薬のフィンゴリモド(ジレニア)などと併用すると、心臓の働きが抑制され徐脈を起こしやすくなります。併用のさいは用量に留意するとともに、心機能検査などで異常がでていないか調べます。
- 糖尿病の薬の副作用(低血糖)を強めるおそれがあります。
- 鎮痛薬との併用により、降圧作用が弱まる可能性があります。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方、服用量を守ってください。
- 自分だけの判断で、量を減らしたり、飲むのをやめてはいけません。急に中止すると、狭心発作など反発的な症状を起こすおそれがあります。中止するときは、医師の判断で徐々に減量するようにします。
- 飲み忘れにも注意してください。万一飲み忘れた場合、2回分を同時に飲んではいけません。

- 【検査】

- 心電図検査や血液検査を定期的に受ける必要があります。
 【食生活】
- とくに飲みはじめに、めまいや立ちくらみを起こしやすいです。急に立ち上がらないで、ゆっくり動作するようにしましょう。また、車の運転や高所での危険な作業には十分注意してください。
- 本態性高血圧症では、生活習慣の見直しも大切。減塩などの食事療法、運動療法、肥満があれば体重を落とすだけでも血圧が下がるものです。軽い高血圧であれば、薬をやめられることもあります。できたら簡易血圧計で自宅で血圧測定をおこない、適切に血圧がコントロールされているかチェックすることをおすすめします。
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効能 |

- 【効能A】

- 本態性高血圧症(軽症〜中等症)、狭心症、頻脈性不整脈

- 【効能B】

- 本態性振戦
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用法 |

- 【効能A】

- 通常、成人はアロチノロール塩酸塩として、1日20mgを2回に分けて経口服用する。なお、年齢・症状等により適宜増減することとするが、効果不十分な場合は、1日30mgまで増量することができる。

- 【効能B】

- 通常、成人はアロチノロール塩酸塩として、1日量10mgから開始し、効果不十分な場合は、1日20mgを維持量として2回に分けて経口服用する。なお、年齢・症状等により適宜増減するが1日30mgを超えないこととする。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
飲み始めに、体がだるくなったり、めまいを感じることがあります。立ちくらみも起こしやすいです。これらは徐々になくなることが多いのですが、症状の強いときは早めに受診しましょう。
注意する症状として、徐脈があります。脈が1分間に50以下になったり、息苦しさや胸苦しさが強いときは、医師に連絡してください。とくに高齢の人は、心不全を含め注意が必要です。
まれですが、喘息発作を誘発する可能性があります。ゼーゼーと呼吸が苦しくなるようでしたら、すぐに受診してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 心不全、心ブロック、高度な徐脈..息苦しい、胸が苦しい、動悸、疲れやすい、むくみ、急な体重増加、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、めまい、気が遠くなる、失神。
- 喘息発作の誘発..咳き込む、ぜいぜい息をする、息をするときヒューヒュー音がする、息切れ、呼吸しにくい。
 【その他】
- だるい、めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 動悸、徐脈、低血圧
- 手足の冷え、しびれ感
- 目の乾燥(目がゴロゴロ、しょぼつく)
- 気分がしずむ、眠気、不眠
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