概説 |
認知症を軽くするお薬です。アルツハイマー型認知症の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- アルツハイマー病では、記憶や思考にかかわるアセチルコリン系の神経の働きが悪くなっています。これが原因で、物忘れがひどくなり、思考力や判断力が低下してしまうのです。比較的ゆっくり進行しますが、徐々に悪化し、日常生活にも支障がでてきます。
このお薬はアルツハイマー病に有効な抗認知症薬です。神経伝達物質であるアセチルコリンを増加させ、アセチルコリン系の神経活動を高める働きをします。結果として、記憶障害をはじめとする認知症の関連症状が改善されるのです。

- 【臨床試験】

- 比較的軽いアルツハイマー型認知症の患者さん533人を2つのグループに分け、この薬と、プラセボ(にせ薬)の効果を比較する臨床試験が行われています。本当に、プラセボを上回る効果があるのかを確かめるのが目的です。効果の判定は、6ヶ月後の認知機能と全般的臨床症状の2つの評価でおこないます。認知機能は、患者さんと面接して、記憶や思考力などを多面的にチェックするもので、高得点(70点)ほど重い症状です。後者の全般的臨床症状は、日常生活や精神症状を含めた病状の変化を付き添いの方の評価をくわえ7段階で判定します。こちらは、点数が低いほど改善、高いほど悪化を意味します。
6ヶ月後の認知機能の試験結果は、この薬を使用していた人達の平均点数が25.1点(使用前25.0点)、プラセボの人達が26.1点(使用前24.8点)でした。わずかですが、この薬を使用した人のほうが点数の変化が少なく、多少なりとも病状がおさえられることが証明できたわけです。一方、実生活にそくした全般的臨床症状は、この薬で4.2、プラセボで4.4とほとんど変わらず、残念ながら有効性を確かめることができませんでした。目にみえて大幅に改善することはなく、決して万能な特効薬ではないのです。ちなみに、全般的臨床症状においては、介護サービスが、この薬を上回るほどのよい影響をおよぼす可能性が示されています。
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特徴 |
- コリンエステラ−ゼ阻害薬に分類される3番目のアルツハイマー病治療薬です。薬剤が皮膚から吸収される経皮吸収型製剤になります。同類の貼り薬としては国内初。従来の飲み薬にくわえ、貼り薬という新たな選択肢が増えたことになります。とくに、飲み込みがうまくできない高齢の人に有益です。
- 有効成分が皮膚からゆっくり吸収され、血中濃度が長時間一定に保たれます。血中濃度の急激な上昇がおさえられるので、飲み薬で多くみられる消化器症状(吐き気や嘔吐)の軽減が期待できます。なお、経口剤としての開発も試みられましたが、消化器症状の副作用のため断念された経緯があります。
- 1日1回貼るだけですので、服薬管理にあたる家族や介護者の負担が軽くなりそうです。薬の使用状況も一目で確認できます。さらに、食事時間と関係なく使用できること、重大な副作用の発現時には剥がせば直ちに中断できること、飲み合わせの心配が少ない点などもメリットです。一方で、貼った部位に発赤やかゆみなどの皮膚症状があらわれやすく、また治療開始から有効維持用量に到達するまで1〜3カ月を要するなどの問題点もあります。
- 認知症の進行度が中程度までなら20〜30%くらいの有効率が期待され、その症状を数カ月〜1年ほど前の状態まで回復できる可能性があります。ただし、劇的な改善はまず望めませんし、対症療法薬ですので 病気そのものの進行を遅らせることもできません。薬を中止すれば、使用しなかったときと同じレベルまで急速に悪化するおそれがあります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 別の薬を使用している場合は、その薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 病気によっては、その症状を悪化させるおそれがあります。たとえば、心臓病、胃潰瘍、気管支喘息、パーキンソン病、てんかんのある人などは慎重に用いる必要があります。
- 注意が必要なケース..心臓病、消化性潰瘍、尿路閉塞、てんかん、気管支喘息、閉塞性肺疾患、パーキンソン病、重い肝臓病、低体重、鎮痛薬を服用している人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 同種同効のコリンエステラ−ゼ阻害薬とは併用できません。ほかにも、副作用がでやすくなったり、逆に効果が弱くなってしまう飲み合わせがあります。市販薬を含め使用中の薬を医師に報告しておきましょう。
- 飲み合わせの悪い薬..コリンエステラ−ゼ阻害薬(アリセプト、レミニール)
- 飲み合わせに注意..ある種の胃薬(ベサコリン、アボビス、アトロピン、ブスコパン等)、抗コリン性パーキンソン病治療薬(アーテン等)など。
 【使用にあたり】
- 貼り忘れや間違いがないように、ご家族あるいは付き添いの方の管理のもとで使用してください。用法・用量は説明書の指示どおりにしましょう。
- 通常、3ステップで漸増します。具体的には、低用量の4.5mgパッチから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量、約3カ月(12週)かけて有効量の18mgまで到達させます(4.5mg→9mg→13.5mg→18mg)。その後は18mgパッチを継続します。段階的に増量する理由は、体を徐々に慣らすためです。そうすると、吐き気や嘔吐などの副作用が軽減されるのです。
- 患者さんの状態に応じて、1ステップで漸増することも可能です。9mgパッチから開始し、原則として4週後に18mgパッチに増量します(9mg→18mg)。有効用量により早く到達できるのがメリットですが、副作用の発現には注意が必要です。心臓病、胃潰瘍、気管支喘息、パーキンソン病、てんかんや肝臓病のある人、低体重の人は3ステップ漸増法のほうが無難でしょう。
- 1日1回、24時間おきに貼り替えます。都合のよい時間を決め、その時間を守りましょう。食事の時間を気にすることはありません。
- 貼る場所は、乾燥して体毛が少ない背中がよいでしょう。胸や上腕部でもかまいません。腹部や内股は皮膚症状が出やすいので、避けたほうが無難です。また、動きの激しい部分や、汗をかきやすい部位、傷や湿疹がある部位もやめてください。汗をよく拭きとり、清潔にしてから貼るようにしましょう。
- 皮膚刺激を避けるため、必ず毎回貼る場所を変えてください。また、貼り替えのさい古いパッチが除去されていることを十分確認してください。2回分を重複して用いてはいけません。
- パッチがしっかりつくように、手のひらでよく押えるよに貼り付けてください。もし、途中で剥がれた場合は、その時点で新しいパッチに貼り替え、翌日は通常通りの時間に貼り替えてください。
- パッチを扱ったあとは、目に手が触れないようにし、手をよく洗ってください。なお、使用済み製剤は接着面を内側にして折りたたみ、子供の手および目の届かない所に安全に廃棄してください。

- 【食生活】

- 眠気やめまいを起こすことがあります。車の運転や危険をともなう機械の操作は避けてください。
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効能 |
軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制 |
用法 |
通常、成人にはリバスチグミンとして1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、維持量として1日1回18mgを貼付する。また、患者の状態に応じて、1日1回9mgを開始用量とし、原則として4週後に18mgに増量することもできる。
本剤は背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替える。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用で一番多いのは、使用部位の皮膚症状です。赤くなったり、かゆくなることがよくあります。同一箇所に貼り続けないで、毎回貼る場所を変えることで、ある程度軽減できると思います。もし皮膚症状があらわれても、ステロイド軟膏や抗ヒスタミン外用薬などで対処可能ですので、医師とよく相談してください。
次に多いのが、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などの消化器症状です。重い副作用は少ないですが、まれに脈拍が異常に遅くなるなど心臓に異常があらわれることがあります。もともと心臓病のある人はとくに注意が必要です。ご家族や介護にあたる人は、下記のような症状をふまえ、患者さんの様子を注意深く見守るようにしましょう。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 徐脈、狭心症、心筋梗塞、房室ブロック、失神..脈が少ない、胸の痛み、冷汗、息苦しい、めまい、気を失う。
- けいれん発作、脳血管障害..けいれん、硬直、頭痛。
- 激しい嘔吐、下痢、脱水..強い吐き気、吐き続ける、下痢が続く。
- 消化管潰瘍・胃腸出血..胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、吐血(コーヒー色のものを吐く)、下血(血液便、黒いタール状の便)、便秘。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 使用部位の皮膚発赤、かゆみ、発疹、腫れ、かぶれ、皮がむける。
- 食欲不振、吐き気、吐く、下痢、腹痛。
- めまい、頭痛、眠気、不眠、体重減少。
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