概説 |
神経痛をやわらげるお薬です。末梢性神経障害性疼痛に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 末梢性神経障害性疼痛は、末梢神経の損傷や機能異常により生じる痛みです。代表的なのが糖尿病性末梢神経障害性疼痛や帯状疱疹後神経痛です。前者はジンジンしびれる感じの痛み、後者ではピリッとする痛みやヒリヒリ焼け付くような痛みを伴うことが多いです。
このお薬は、そのような末梢性神経障害性疼痛に有効です。作用メカニズムは、痛みを発する異常に興奮した神経系において、各種の興奮性神経伝達物質の放出を抑制することによります。過敏になっている神経をしずめることから、一般的な鎮痛薬(NSAIDs)が効きにくい神経に起因する痛みに効果的なのです。
処方対象となるのは、前述の糖尿病性末梢神経障害性疼痛や帯状疱疹後神経痛をはじめ、末梢性と中枢性の両方の神経障害がかかわる脊髄神経根症、幻肢痛、がん痛、化学療法誘発性疼痛などです。有病率が多い慢性腰痛やひざ関節痛に対しては、末梢性神経障害の関与を慎重に見極めたうえで使用する必要があります。

- 【薬理】

- 過剰に興奮した興奮性神経系において、電位依存性カルシウムチャネルの機能に対し補助的な役割をになうα2δ(アルファ2デルタ)サブユニットと強く結合します。すると、神経シナプスにおけるカルシウム流入が低下し、グルタミン酸等の興奮性神経伝達物質の放出が抑制されます。その結果として、神経障害性疼痛や線維筋痛症による痛みがやわらぐのです。

- 【臨床試験】

- 糖尿病性末梢神経障害性疼痛の患者さん824人による臨床試験が行われています。この薬を飲む人とプラセボ(にせ薬)を飲む人に分かれ、それぞれの鎮痛効果を比較する試験です。痛みの評価は、起床後に、過去24時間の疼痛を‘痛みなし’の0点から、‘想像できる最悪の痛み’の10点の11段階で点数化し、その1週間の平均点で行います。そして服薬前から服薬14週時の点数の低下幅をもって有効性を判定するのです。
その結果、この薬を飲んでいた人達の低下幅の平均は約1.8点(5.5→3.7点)、プラセボの人達は約1.3点(5.5→4.2点)でした。大きな差はでませんでしたが、この薬のほうが0.5点ほど低下幅が大きく、統計学的な有意差も認められました。この薬の糖尿病性末梢神経障害性疼痛に対する有効性が証明されたわけです。同様に、帯状疱疹後神経痛を対象とした別の試験でもプラセボに対する優越性が認められました。
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特徴 |
- 新しい作用機序をもつ疼痛治療薬です。専門的にカルシウムチャネルα2δ(アルファ2デルタ)リガンドと呼ばれる部類です。その特異な作用から、従来の鎮痛薬が不得意とする神経障害性疼痛によい効果を示します。この系統は、末梢性神経障害性疼痛に対する第一選択薬の一つとして位置づけられます。
- 同類薬のプレガバリン(リリカ)と同様の有効性と安全性が示されています。眠気、めまい、体重増加、浮腫等の副作用発現率も同程度です。
- 適応症は末梢性神経障害性疼痛に限定されます。このため、プレガバリンが適応となる中枢性神経障害性疼痛(脳卒中後疼痛等)や線維筋痛症は治療対象になりません。
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注意 |
 【診察で】
- 腎臓病など持病のある人は、医師に報告してください。
- 妊娠中の人、授乳をしている人は医師に申し出てください。
- 使用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 腎臓の悪い人は薬の排泄が遅れがちです。そのため、少量で開始するなど服用量や服用間隔に配慮します。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 安定薬など精神・神経系を抑制する薬と飲み合わせると眠気などの副作用が出やすくなります。
- 痛風治療薬のプロベネシド(ベネシッド)や胃薬のシメチジン(タガメット)との併用により、この薬の血中濃度が上昇し、作用が増強するおそれがあります。
- 飲酒は控えてください。アルコールと飲み合わせると眠気やふらつきが起こりやすくなります。
 【使用にあたり】
- 医師の指示どおりに飲んでください。少量から開始し、効果や副作用をみながら1週間以上の間隔をあけ段階的に増量します。したがって、十分な効果がでるまで少し時間がかかります。
- 最終的に、1回15mgを1日2回服用します。年齢や症状によっては1回10mgとし、腎機能が低下している場合はさらに減量することがあります。
- 飲み忘れた場合は、気づいたときにすぐ飲んでください。ただし、次の服用時間が近ければ、忘れた分は抜かし、次の時間に1回分飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
- 自分だけの判断で飲むのをやめてはいけません。急にやめると、その反動で眠れなくなったり、吐き気や下痢を起こすおそれがあります。中止する場合は、医師の診断のうえ徐々に減量しなければなりません。

- 【検査】

- 体重計測を定期的に行います。必要に応じ肝機能検査を実施します。
 【妊娠・授乳】
- 妊娠中における安全性はよく分かっていません。医師の判断で必要性が高い場合に限り用いられます。
- 授乳は避けてください。飲んだ薬が母乳中への移行する可能性があります。
 【食生活】
- 体重増加に気をつけてください。極端に増えることはないと思いますが、ゆるやかな増加傾向が示されています。食べ過ぎに注意し、適度な運動を心がけましょう。
- 眠気を催したり、めまいやふらつきを起こすことがあります。さらには意識消失が報告されており、転倒や転落によるケガに注意が必要です。車の運転など危険を伴う機械の操作や高所作業はしないでください。
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効能 |
末梢性神経障害性疼痛 |
用法 |
通常、成人は、ミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口服用し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し、1回15mgを1日2回経口服用する。なお、年齢、症状により1回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、1日2回服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
眠気とめまいが多いです。高齢の人など ケガにつながるおそれがあります。実際に転倒による骨折も報告されているようです。とくに飲み始めの10日間くらいまで要注意。症状が強い場合は早めに受診してください。増量のペースや用量の調整が必要かもしれません。
体重増加、浮腫(むくみ)、かすみ目など眼障害も特徴的な副作用です。体重は服薬の継続により徐々に増える傾向がありますから、気になるときは 医師とよく相談してください。重い副作用はまずありませんが、肝酵素上昇を伴う肝機能障害を起こす可能性があります。けん怠感や食欲不振など体調が悪ければ医師に話してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 転倒、転落、骨折..強いめまい、ふらつき、うとうと、意識消失などにより転倒、転落、骨折するなど大けがを負う。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 腎臓の障害..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、吐き気、頭痛、のどが渇く、だるい、けいれん、血圧上昇。
 【その他】
- 眠気、うとうと、めまい、ふらつき
- 浮腫(むくみ)、体重増加
- かすみ目、二重に見える、視力低下、視覚異常
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