概説 |
憂うつな気分をやわらげ、意欲を高めるお薬です。うつ病やうつ状態の治療に用います。 |
作用 |  【働き】
- 気分が晴れずに落ち込んだり、悲観的になったり、やる気がでない、集中できない、眠れない・・そんなこじれた心の症状を改善し、気持ちが前向きになるのを助けます。また、不安や緊張した気分をほぐして、気持ちを楽にします。
- うつ病のほか、パニック障害、過食症などいろいろな心の不具合に応用されます。

- 【薬理】

- 脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンの量を増やし、神経の働きをよくします。ノルアドレナリンの増加は「意欲」が高まることにつながると考えられています。
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特徴 | 第二世代の四環系抗うつ薬です。作用はやや劣りますが、抗コリン作用などによる副作用が軽減されています。効果の発現は早いほうです。 |
注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。病気によっては症状を悪化させるおそれがあります。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 服用後の注意事項や副作用について、ご本人、できたらご家族も含め、よく説明を受けておきましょう。

- 【注意する人】

- 緑内障、前立腺肥大で尿の出の悪い人、てんかん、心臓病のある人などは、病状を悪化させるおそれがありますので慎重に用います。緑内障の人は定期的に眼圧検査を受けるようにましょう。また、高齢の人は副作用がでやすいので、少量から開始するなど服用量に十分注意します。
若い人に用いる場合は、治療上の不利益についても考慮する必要があります。症状によっては処方を控えなければなりません。この薬を含む複数の抗うつ薬の臨床試験を分析したところ、24歳以下では かえって悪い衝動を引き起こすおそれがあるとの報告があるためです。また、躁うつ病においても逆効果になることがありますので、一般的なうつ病との見極めが重要です。
- 注意が必要なケース..緑内障、尿の出にくい人(前立腺肥大症)、心臓病、徐脈、低カリウム血症、てんかん、躁うつ病、統合失調症の素因、衝動性が高い精神症状をともなう人、肝臓や腎臓の悪い人、高齢、24歳以下、いのちを絶ちたいという思いのある人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)、ラサギリン(アジレクト)およびサフィナミド(エクフィナ)との併用は禁止されており、一定期間あける必要があります。
- ほかにも飲み合わせに注意する薬があります。他の抗うつ薬、安定薬、抗けいれん薬など 服用中の薬があれば必ず医師に報告してください。
- 飲酒は控えめにしましょう。めまいや眠気などの副作用がでやすくなります。
 【使用にあたり】
- 服用量は個人差が大きいです。ふつう、少量より開始し、よい効果のでる量まで徐々に増やしていきます。よく効いてくるまでに、2〜3週間以上かかるかもしれません。
- 飲み始めや増量時に、かえって気分が不安定になるときは、早めに医師と相談してください。できましたら、ご家族など付き添いの方も、行動の変化や不穏な行為に注意するなど、服用後の様子を注意深く見守りましょう。因果関係ははっきりしませんが、敵意や攻撃性、衝動性にもとづく事故や犯罪事例も報告されているようです。
- 急に飲むのを中止すると反動で症状が悪化したり、体の具合が悪くなることがあります。中止する際は、医師の判断で徐々に減量しなければなりません。
- うつ病では、症状がよくなってからも、しばらく少量を続けることが多いです。いわゆる「揺りもどし」による再発を防ぐためです。症状や環境にもよりますが、半年〜2年くらいは続けることになると思います。再発を繰り返しているときは、更に長期の服用となります。指示された期間、続けるようにしてください。
 【食生活】
- 眠気やめまいを起こすことがあります。車の運転、危険な仕事、高所での作業には十分注意してください。
- 口が乾いて不快なときは、冷たい水で口をすすいだり、小さな氷を口に含むとよいでしょう。
- まずは、がんばらないで休養することが第一です。脳の疲れがとれてくれば、自然に治ってきます。
- 抗うつ薬は、症状の回復を早めますが、うつ病の原因そのものは治せません。落ち着いてきたら、生活や職場の環境調整、さらに認知療法などを合わせておこなうとよいでしょう。今はつらいかもしれませんが、あせらずに、ゆっくりと治療なさってください。
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効能 |
うつ病・うつ状態 |
用法 |
ミアンセリン塩酸塩として、通常成人1日30mgを初期用量とし、1日60mgまで増量し、分割経口服用する。また、上記用量は1日1回夕食後あるいは就寝前に服用できる。なお、年齢、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
四環系の抗うつ薬は、三環系に比べて副作用が少ないほうです。おもなものは、口の渇き、眠気、めまい、立ちくらみ、便秘などです。これらは軽ければそれほど心配いりませんが、ひどいときは早めに受診してください。ほかに、手のふるえ、かすみ目、尿が出にくい、動悸などもみられます。
もし、普通でない不安感や焦燥感、イライラ落ち着かない、気持ちの高ぶり、悪い衝動にかられるなど、精神的な変調が気になるときは、医師と連絡をとり指示をあおいでください。このような気分障害は、とくに飲み始めや薬の量を増やしたときに現れやすいものです。
重い副作用は頻度的にほとんどありませんが、悪性症候群や血液障害、肝機能障害、重い不整脈などに念のため注意が必要です。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、すぐ医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 悪性症候群(Syndrome malin)..動かず黙り込む、体の硬直、飲み込めない、急激な体温上昇、発汗、頻脈、ふるえ、精神変調、意識障害。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- けいれん..筋肉のぴくつき、ふるえ、白目、硬直、全身けいれん、意識低下・消失。
- 不整脈(QT延長、心室頻拍)..動悸、脈が遅い、脈が速い、脈の乱れ、胸の痛みや違和感、めまい、立ちくらみ、失神。
 【その他】
- 口の渇き、吐き気、食欲不振、便秘
- 眠気、けん怠感、めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 目のまぶしさ・かすみ、尿が出にくい
- 低血圧、動悸、頻脈、不整脈
- 手のふるえ、動作がにぶる、口周囲の異常な動き
- 発疹
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