概説 |
てんかん発作を予防するお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- てんかんは、脳の神経の電気信号が過剰に発射され、意識障害やけいれん発作を繰り返す病気です。その発作型から、大きく2つのタイプに分かれます。脳の一部から興奮が始まる「部分発作」と、脳全体で始まる「全般発作」の2つです。ときに、部分発作から全般発作に移行することもあります(二次性全般化発作)。そして、異常波の発生部位や広がりにより、さまざまな病状を呈します。
このお薬は、とくに部分発作に有効です。単独で用いるほか、他の抗てんかん薬といっしょに飲むとこともあります。作用が違うため、従来品との併用療法により発作抑制効果が高まるのです。実際の臨床試験でも、難治例にこの薬を追加すると 発作頻度が30%〜40%減少することが確かめられています。全般発作の強直間代発作(大発作)に対しては、他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に追加し併用します。

- 【薬理】

- 神経の電気信号は、ナトリウムチャネルという機能により発射されます。てんかんにおける神経の興奮性を決定付けるのは、活性化できるナトリウムチャネルの割合です。この薬は、ナトリウムチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進させ、活性化できるナトリウムチャネルの割合を減少させます。結果として、神経の過剰な興奮が抑制されるのです。

- 【臨床試験-1】

- カルバマゼピン(テグレトール)との比較試験が行われています。カルバマゼピンは部分発作に標準的に用いられる抗てんかん薬です。参加したのは、新規にてんかんと診断され、部分発作または未分類の全般性強直間代発作がある患者さん約900人。そして、この薬を飲む人とカルバマゼピンを飲む人に分かれ、6カ月間あたりの発作消失率を比較します。
その結果、この薬を飲んだ人達の消失率は73.6%(327/444人)、カルバマゼピンの人達で69.7%(308/442人)でした。標準薬のカルバマゼピンに劣ることなく、部分発作に対し同程度の有効性が証明されたわけです。

- 【臨床試験-2】

- 併用療法の検証もおこなわれています。参加したのは、他の抗てんかん薬で十分な効果が得られない部分発作のある患者さん547人。そして、この薬を低用量(200mg)追加する人、高用量(400mg)追加する人、プラセボ(にせ薬)を追加する人に分かれ、併用療法における効果を比較するのです。
その結果、この薬で併用療法をおこなった人達の28日あたりの発作回数の減少量(中央値)は、低用量の人達で3.3回(11.0→6.5回/28日)、高用量の人達で4.5回(10.0→4.9回/28日)、プラセボの人達で1.1回(10.5→9.6回/28日)でした。プラセボに対する減少率は、低用量で30%、高用量の人達で40%です。
また、発作回数が50%以上改善した患者さんの割合(レスポンダー率)は、低用量の人達で約39%(70/182人)、高用量の人達で49%(88/179人)、プラセボの人達で20%(36/183人)でした。この薬を併用した人達のほうが明らかに発作頻度が減少したことから、併用療法の有効性が証明されたわけです。
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特徴 |
- 新しい作用の抗てんかん薬です。ナトリウムチャネルブロッカーに分類されますが、従来のものとは作用のしかたが違います。従来品がナトリウムチャネルの急速な不活性化を促進するのに対し、緩徐な不活性化を促進するのです。新規作用機序をもつため、別の抗てんかん薬との併用効果が期待できます。
- 機能性アミノ酸の一種で、薬物相互作用を起こしにくいです。他の抗てんかん薬をふくめ主要薬剤とのあいだに相互作用は認められていません。
- 錠剤とドライシロップが販売されています。ドライシロップは、小児や嚥下機能の低下している高齢者に向きます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人、また妊娠中の人は医師に伝えてください。
- 市販薬を含め服用中の薬を医師に教えてください。
- 注意事項や副作用について十分説明を受けておきましょう。

- 【注意する人】

- 肝臓や腎臓が悪いと薬の代謝・排泄が遅れ、血中濃度が上昇しやすいです。このため、最高用量に配慮するなど慎重に用いる必要があります。心臓病のある人は、不整脈(徐脈)の発現に注意してください。
- 適さないケース..重度の肝機能障害のある人。
- 注意が必要なケース..肝臓病、重い腎臓病、血液透析を受けている人、心臓病のある人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 抗不整脈薬など脈拍に影響する薬剤と併用すると、脈や心電図に異常があらわれる可能性があります。
 【使用にあたり】
- 用法用量は症状、年齢や体重によって違います。決められた飲みかたを必ず守ってください。服用回数は1日2回です。食事とは関係なく飲めます。
- 少量で開始し、効果や副作用をふまえ、1週間以上の間隔をあけて増量します。適量が決まったら、その血中濃度を保つため 毎日きちんと飲み続けなければなりません。飲み忘れにも気をつけましょう。
- 飲み忘れた場合は、気付いたときに すぐ飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、1回分は抜かし次の通常の時間に1回分を服用してください。2回分を一度に飲んではいけません。
- 併用療法として他の抗てんかん薬といっしょに飲むことがあります。たとえば、バルプロ酸(デパケン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)、レベチラセタム(イーケプラ)などです。
- 心臓の脈拍に影響する可能性があります。脈拍の異常、動悸、ふらふら感、失神、息切れなどがあらわれたら医師の診察を受けてください。
- いつもと違う精神症状が気になるときは医師と連絡を取ってください。たとえば、いらいら感、怒りっぽい、興奮しやすい、混乱、攻撃的といった症状です。ご家族など付き添いの方も、行動の変化や不穏な行為に注意するなど、服用後の様子を注意深く見守りましょう。
- てんかんの治療においては、服用が長期になるものです。自分の判断でやめてはいけません。突然の中止や急激な減量により、重いけいれん発作を起こすおそれがあります。中止する場合は、医師の慎重な判断のもと、1ヶ月以上かけて徐々に減量しなければなりません。

- 【検査】

- 必要に応じ心電図検査をおこないます。心臓病のある人や脈拍に影響しやすい薬剤を飲んでいる場合などです。
 【妊娠授乳】
- 妊娠中は慎重に用いる必要があります。妊娠出産を予定している女性は、事前に医師と相談しておくとよいでしょう。医師と十分な打ち合わせをし、計画的に妊娠・出産することで、安全性が高まります。
- 授乳についても医師の指示に従ってください。母乳中への薬剤移行の可能性があります。治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、医師が授乳の可否を決めます。

- 【食生活】

- 目がかすんだり、2重に見えることがあります。また、眠気やめまいを起こしやすいです。車の運転をふくめ危険をともなう機械の操作は避けてください。
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効能 |
- てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
- 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
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用法 |
 【錠】- <成人>

- 通常、成人はラコサミドとして1日100mgより服用を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて増量し、維持用量を1日200mgとするが、いずれも1日2回に分けて経口服用する。なお、症状により1日400mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として100mg以下ずつ行うこと。
- <小児>

- 通常、4歳以上の小児はラコサミドとして1日2mg/kgより服用を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kgずつ増量し、維持用量を体重30kg未満の小児は1日6mg/kg、体重30kg以上50kg未満の小児は1日4mg/kgとする。いずれも1日2回に分けて経口服用する。なお、症状により体重30kg未満の小児は1日12mg/kg、体重30kg以上50kg未満の小児は1日8mg/kgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kg以下ずつ行うこと。ただし、体重50kg以上の小児では、成人と同じ用法・用量を用いること。
 【ドライシロップ】- <成人>

- 通常、成人はラコサミドとして1日100mg(ドライシロップとして1g)より服用を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて増量し、維持用量を1日200mg(ドライシロップとして2g)とするが、いずれも1日2回に分けて用時懸濁して経口服用する。なお、症状により1日400mg(ドライシロップとして4g)を超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として100mg(ドライシロップとして1g)以下ずつ行うこと。
- <小児>

- 通常、4歳以上の小児はラコサミドとして1日2mg/kg(ドライシロップとして20mg/kg)より服用を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kg(ドライシロップとして20mg/kg)ずつ増量し、維持用量を体重30kg未満の小児は1日6mg/kg(ドライシロップとして60mg/kg)、体重30kg以上50kg未満の小児は1日4mg/kg(ドライシロップとして40mg/kg)とする。いずれも1日2回に分けて用時懸濁して経口服用する。なお、症状により体重30kg未満の小児は1日12mg/kg(ドライシロップとして120mg/kg)、体重30kg以上50kg未満の小児は1日8mg/kg(ドライシロップとして80mg/kg)を超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kg(ドライシロップとして20mg/kg)以下ずつ行うこと。ただし、体重50kg以上の小児では、成人と同じ用法・用量を用いること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは、めまい、眠気、頭痛、震え、吐き気、それと 目のかすみや複視などの眼障害です。めまいや頭のふらふら感は脈拍の異常から起こることもありますから、その症状を医師に話してください。
頻度はまれですが、注意が必要な副作用として徐脈があります。もともと心臓病のある人や、脈拍に影響しやすい薬剤を飲んでいる場合は、心電図検査をおこない、波形に異常がないか調べます。動悸やめまい、失神など下記のような症状が気になるときは医師に報告してください。
なお、てんかんの薬を自分の判断で急に中止すると、反動で重い発作を起こしてしまうおそれがあります。用法用量を守り規則正しく服用することが大切です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 房室ブロック、徐脈、失神..動悸、胸の違和感、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、めまい、ふらふら感、息切れ、気が遠くなる、気を失う。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 過敏症症候群..発疹、発熱、だるい、吐き気、リンパ節の腫れ、皮膚や白目が黄色くなる。
- 無顆粒球症..発熱、のどの痛み、口内炎、咳、だるい。
 【その他】
- めまい、眠気、傾眠(うとうと)、頭痛、震え、不眠
- 吐き気、吐く、下痢、食欲減退
- 複視(二重に見える)、霧視(かすんで見える)
- 肝機能値異常
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